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優しさは、なぜ搾取されるのか

優しさは、なぜ搾取されるのか
大阪府 仁蓉まよ 優しさは、なぜ搾取されるのか

現代社会では、「優しい人」が高く評価される一方で、その優しさが“無限に提供されるもの”として扱われてしまう場面が少なくありません。
特に女性は、家庭、職場、恋愛、支援現場において、「気を遣えること」「察すること」「我慢できること」を美徳として期待され続けてきました。

しかし私は、助産師として、また女性支援や福祉経営に関わる中で、強く感じていることがあります。
それは、「優しさ」と「共感」は、本来“尊い能力”であるにもかかわらず、社会構造の中では極めて利用されやすい資源になっているという現実です。

本稿では、“優しい人ほど壊れやすい”社会の構造と、共感が搾取されるメカニズムについて考えていきます。

共感力は「無償資源」として扱われやすい

仁蓉まよ

女性は幼少期から、「周囲に配慮すること」を学習します。
空気を読む。怒らせない。場を丸く収める。誰かを支える。

しかし問題なのは、その能力が“当然提供されるもの”として扱われる点です。

例えば職場でも、感情のケア役を担うのは女性に偏りやすい。
会議後のフォロー、人間関係の調整、感情的になった相手への対応。
こうした“見えない労働”は、成果として評価されにくいにもかかわらず、組織運営には不可欠です。

つまり、共感力は社会を支えているのに、「無料で使われるインフラ」になっているのです。

「優しい人」が境界線を失いやすい理由

仁蓉まよ

優しい人ほど、「断ること」に罪悪感を持ちます。
相手を傷つけたくない。期待に応えたい。嫌われたくない。

その結果、自分の限界を超えてでも応じ続けてしまう。

しかし、本来“境界線”とは冷たさではありません。
むしろ、自分を壊さないために必要な知性です。

福祉や医療の現場でも、燃え尽きる人には共通点があります。
責任感が強く、他者の苦しみに敏感で、「自分が支えなければ」と思い続けてしまうのです。

けれど、壊れてしまえば、支援は継続できません。
優しさとは、“無限供給”ではないのです。

恋愛市場でも「共感」は消費される

仁蓉まよ

恋愛や婚活でも、「聞いてくれる女性」「受け止めてくれる女性」が求められる場面は多くあります。

しかし時に、それは対等な関係ではなく、“感情労働の提供”になってしまう。

相手の不安を支え続ける。
機嫌を調整する。
傷ついた自己肯定感を回復させる。

こうした関係が長期化すると、女性側だけが“心理的インフラ”として消耗していくケースがあります。

「愛されること」と、「感情処理装置になること」は違う。
この線引きを持てるかどうかは、現代女性にとって極めて重要なテーマなのです。

SNS時代、「共感」は収益化される

仁蓉まよ

現在のSNSでは、「共感」が大きな価値になります。
優しい言葉。寄り添う発信。安心感。

もちろん、それ自体は悪いことではありません。
しかし同時に、“共感できる人”ほど消耗しやすい構造も存在します。

DM相談が止まらない。
境界線なく依存される。
感情を受け止め続ける。
期待を裏切れなくなる。

そして、発信者自身が疲弊していく。

共感は、人を集めます。
しかし、“集められること”と“守られること”は別問題なのです。

「ケアする人」が最も守られていない社会

仁蓉まよ

私は、医療・福祉・女性支援の現場に長く関わる中で、「支える人ほど孤立する」という現実を何度も見てきました。

助産師、看護師、介護士、相談員、母親、支援者。
社会は、彼女たちの“優しさ”によって維持されています。

しかし、そのケア提供者自身のケアは、驚くほど脆弱です。

「優しいからできるでしょう」
「あなたなら大丈夫でしょう」
「人を支える仕事なんだから」

そうして、“支えられる側”になる権利を失っていく。

これは個人の問題ではありません。
社会設計の問題です。

優しさには「コスト」が存在する

仁蓉まよ

共感には、体力も脳のエネルギーも使われます。
他人の感情を受け取ることは、実は高度な認知負荷なのです。

だからこそ、優しい人ほど疲弊する。

しかし社会は、そのコストを可視化してきませんでした。

数字にできない。
成果として見えない。
「好きでやっている」と誤解される。

結果として、“ケアする能力”を持つ人ほど、安く使われやすくなるのです。

「いい人」であることは戦略ではない

仁蓉まよ

特に女性は、「いい人でいること」が安全戦略になりやすい。

嫌われないようにする。
摩擦を避ける。
空気を壊さない。

しかし、それを続けるほど、“自分の欲望”が分からなくなることがあります。

本当に嫌だったこと。
本当に望んでいたこと。
本当は離れたかった関係。

優しさだけで人生を設計すると、最終的に“自分自身への共感”を失ってしまうのです。

「共感」を守るには、知性が必要である

仁蓉まよ

私は、これからの時代に必要なのは、「優しさを捨てること」ではないと思っています。

必要なのは、“守れる優しさ”に変えることです。

誰に、どこまで、どのように関わるのか。
どこで線を引くのか。
何を引き受けないのか。

つまり、共感にも「設計」が必要なのです。

優しさは、本来とても高度な能力です。
だからこそ、“利用されない構造”を自分で作らなければならない。

これからの女性に必要なのは、「ただ優しい人」ではありません。
“自分を守りながら共感できる人”なのです。

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