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支援されてきた女性が、誰かを追い詰めるとき ――当事者の“加害性”と無意識の再生産

支援されてきた女性が、誰かを追い詰めるとき  ――当事者の“加害性”と無意識の再生産
大阪府 仁蓉まよ 支援されてきた女性が、誰かを追い詰めるとき ――当事者の“加害性”と無意識の再生産

女性支援は、人生の選択肢を増やすために存在します。けれど現場にいると、支援を受けた経験がある女性が、別の女性に対して「正しさ」を武器にしてしまう場面に出会います。
たとえば、同じように困難を経験したはずなのに、回復の速度や選ぶ道が違うだけで「それは甘え」「努力が足りない」と言われてしまう。支援の言葉は本来、救うためにあるのに、時に人を黙らせる力にもなります。

本稿では、誰かを断罪するためではなく、こうした現象が起きる“構造”を明らかにし、支援が支援として機能し続けるための視点を整理します。

被害経験は免罪符にならない

仁蓉まよ

被害者であった経験は、確かに人の感受性を育てます。しかし「傷ついた側だったから、私は安全だ」とは言い切れません。
具体例として、DVやモラハラを経験した女性が、同じ経験を語る別の女性に対し「でも私は離れた」「私ならもっと早く動く」と言ってしまうことがあります。これは意地悪というより、経験が“比較の尺度”に変わった瞬間です。

被害経験は「共感の入口」になる一方で、「自分の方が正しい」という優劣の物差しにもなり得る。
ここを認めない限り、支援の場はいつでも“新しい上下関係”を生みます。

支援は「正しさ」を作りやすい

仁蓉まよ

支援は善意から始まりますが、運用されると「こうすれば回復する」「こう生きるのが望ましい」という“モデル”が作られやすい。
たとえば、就労支援や自立支援の文脈で「まずフルタイムで働ける状態を目指そう」と言われると、体調が安定しない人や慢性疾患のある人は、その時点で劣等感を持ちやすくなります。さらに、支援を受けて立ち直った経験のある当事者が、そのモデルを熱心に語るほど「それができない人は甘い」という空気が生まれる。

支援が“道”を示すこと自体は悪くありません。しかし、道が一本しかないように語られた瞬間、支援は規範になり、外れた人を追い出します。

「届いた支援」が前提になる危うさ

仁蓉まよ

支援は情報にアクセスできる人ほど届きやすい現実があります。SNSを使える、文章で相談できる、窓口に行ける、時間が取れる、体力がある。これらはすべて“資源”です。
具体例として、メンタルが不調な女性ほど、申請書類を揃えたり、予約電話をしたり、面談に行ったりという手続きができず、結果として制度から脱落します。それなのに、支援に辿り着けた側が「制度はあるのに、なぜ使わないの?」と言ってしまうと、届かなかった人は二重に傷つきます。

「支援がある」ことと「支援が届く」ことは別問題です。この差を忘れた瞬間、当事者は無意識に制度の代弁者になり、追い詰める側に回ります。

回復モデルが“回復の暴力”になる

仁蓉まよ

回復ストーリーは希望になります。けれど、希望が標準化されると苦しさに変わります。
たとえば「半年で復職できた」「離婚後すぐに仕事を軌道に乗せた」といった成功談は、同じ状況の人にとって救いにもなります。しかし回復が遅い人、症状が波打つ人、家族状況が複雑な人にとっては「私はできていない」という自己否定を強める材料にもなる。
さらに支援コミュニティの中で「前を向こう」「ポジティブに行こう」という言葉が繰り返されると、悲しみや混乱を語ること自体が“場違い”になり、結果として沈黙が生まれます。

回復モデルは、適用範囲を誤ると暴力になります。

加害性の正体は「防衛」と「恐れ」

仁蓉まよ

当事者が誰かに厳しくなるとき、その背景には防衛反応があることが多いのです。
具体例として、支援を受けながらやっと生活を立て直した女性が、同じ場で「まだ苦しい」「まだ動けない」と言う人を見ると、無意識に自分の過去が刺激されます。「自分も戻るかもしれない」「崩れるかもしれない」という恐れが、相手への厳しさに変換される。

加害性は、意地悪ではなく“怖さ”から生まれる場合があります。ここを理解すると、「人を責める」ではなく「構造を整える」方向へ議論を進められます。

支援コミュニティで起きる静かな排除

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支援の場は、一見やさしい言葉で満ちています。だからこそ「違和感」が表に出にくい。
具体例として、会話の中で「あなたのためを思って言うけど」という前置きが頻発すると、言われた側は反論しづらくなります。違和感を表明すれば「感謝がない」「成長を拒否している」と解釈されやすいからです。結果として、傷ついた人ほど黙り、参加しなくなる。

これは大声の攻撃ではありません。けれど、もっとも気づきにくい排除です。支援の場に必要なのは、正しさよりも“違和感を言っていい安全性”です。

免罪符を手放す設計が支援を強くする

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支援に関わる人が持つべきなのは「私は正しい」という確信ではなく、「私は人を傷つけうる」という前提です。
たとえば運営側が、定期的に「この場で言いづらいことはありませんか」「ルールが誰かを苦しめていませんか」と問いを置く。ファシリテーターが“正解”を言わず、複数の選択肢を同時に肯定する。あるいは「回復の速度は人によって違う」という合意を場の前提にする。

こうした設計があると、当事者の無意識の加害性は“起きなくなる”のではなく、“起きても修復できる”状態になります。支援は、清潔さより修復力で続いていくのです。

支援は「正しさ」ではなく“関係の更新”で成り立つ

仁蓉まよ

支援されてきた女性が誰かを追い詰めてしまうのは、個人の性格が悪いからではありません。支援がモデル化され、正しさが固定され、届く人と届かない人の差が見えなくなったとき、無意識の加害性は起きやすくなります。
だから必要なのは、「支援をする/される」の二分法を超えて、支援を“関係性の更新”として捉え直すことです。
回復の形を一つにしない。
違和感を言える余白を残す。
制度が届かない現実を前提にする。
そして、誰もが加害性を持ちうると認めたうえで、修復できる仕組みを整える。

支援とは、誰かを救ったという達成ではなく、問い直し続ける責任です。その責任を引き受けたとき、支援は初めて「人を生かす力」として持続可能になります。

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